私が観て良かったと思う映画は、「ヴィオレッタ」というフランス映画です。
この映画は、監督が自ら体験したことを描いています。
芸術のために、まだ幼い少女である、実の娘ヴィオレッタのヌード写真を撮り、自分の名声と虚栄心を満たすために利用してしまいます。
幼いヴィオレッタは、初めは母親に構ってもらえていることに嬉しく思って、お遊びのような感じでモデルをしていきます。
ですが、その少女の妖艶な美しさを写した写真は話題となり、人気が出てきます。
次第に母親アンナの要求はエスカレートしていき、ヌードにならせたり、男性との写真撮影では、キスをしなさいと命じたりします。
幼いながらにも、不快感を感じとったヴィオレッタは抵抗します。
もう写真なんか取らないとキッパリ拒絶をしますが、母親アンナはそれを無視して写真を撮ろうとします。
次第に親子関係は崩れ、ヴィオレッタは母親を憎むようになります。
ヌード写真が話題になるにつれ、ヴィオレッタは学校でもいじめを受けるようになります。
お友達の家に遊びに行くと、その友達の母親に「ほら、有名な女優さんがきたわよ」と嫌味を言われ、楽しい時間を過ごすことなく帰ってしまいます。
家にはお金がなく、父親はいません。
憎い母親と、唯一の頼みが祖母でした。ですがその祖母も身体が悪く、死んでしまいます。
頼みの綱が消え、とうとうヴィオレッタは母親と2人きりです。
どんどんヴィオレッタの精神は蝕まれていきます。
学校にもいかなくなったヴィオレッタ。
そこへ、母アンナに児童虐待として裁判所から親権剥奪の恐れがあるとの通告が届く。
ヴィオレッタはもう写真を取らせてはいなかったが、以前に撮った写真が未だに出回ってることに欺瞞を感じる。
アンナは裏で写真を売っていた。
何度も写真を取りたくないと訴えるヴィオレッタの声を無視し、その後も何度もアンナは写真を撮らせてと口にする。
ストレスの頂点に晒されたヴィオレッタ。
「毛むくじゃらになりたい!」と暴れながら言ったセリフはまだ幼い少女が発するには悲痛な叫びであった。
そして、後半に明かされる、母アンナの過去。
自分は、"曽祖父が祖母をレイプして出来た望まれない子"であることを涙ながらに明かしたテープをヴィオレッタに聞かれる。
アンナの芸術に対する作品が性的なものと深く結びついている理由がここで露呈される。
そんな母の愛しているという呪いのような言葉から逃げるように、ヴィオレッタは家を出る。
そこでひったくりをして施設に収容され、終わるのだが、美しいヴィオレッタの退廃的で耽美なこのお話が、実話というのだから驚きです。