この映画は、音楽とともに成長していく人間模様を描いたドラマです。
主人公のウィリアムは、姉の残したレコードを聴いて音楽に目覚めました。
音楽ライターとして、バンドに同行することになったウィリアムは、そこで恋に落ちます。
その相手は、グルーピーのペニーレイン。
しかし、楽しいだけの旅ではありません。
恋の悩みだけではなく、記事がなかなか進まなかったり、厳格な母親・バンドメンバーとの関係など、さまざまな葛藤があります。
葛藤しているのは、ウィリアムだけではありません。
ペニーレインや、バンドメンバー一人一人も現状と現実と戦っています。
そのような、人間の葛藤とともに一人一人が成長していくストーリーを描いた映画です。
そして、音楽はその一人一人を励まし、心を温めてくれます。
その音楽の力を表現した象徴的なシーンがあります。
それは、バスの中で皆で歌うシーンです。
現実に疲弊したバンドメンバーのラッセルが、一夜あけて、迎えにきたバスに乗り込みました。
心がぼろぼろになっているラッセルに対して、みんなは声を掛けてあげることができません。
そしてラッセルも誰に何て声を掛けていいのかわかりません。
傷ついているのはラッセルだけではなく、みんなも同じでした。
お互いに傷ついているということは、痛いほど分かっています。
そのとき、バスには、ラジオが流れていました。
そしてラジオからは、エルトンジョンのタイニーダンサーが流れてきました。
その曲に合わせて、バンドメンバーのドラムがスティックでリズムを取り始めました。
そして、一人ずつラジオと一緒に歌い始めていき、合唱をしていきます。
最後にはラッセルも一緒に歌います。
一つの音楽が皆の傷を癒し、心の距離を近づけるシーンです。
音楽は一人で聴くだけのものではなく、誰かと共有することによって、より大きな力になることがあります。
私自身このシーンが好きで、何度も何度も繰り返し見ました。
演出としては、もしかすると、定番な方法かもしれません。
しかし、これが音楽の力だと思います。
一つの曲が、一つのメロディ・歌詞が想いを伝え、一緒に歌うことで言葉にできないぬくもりを生み出します。
そして、音楽は、何かのきっかけを与えてくれたり、勇気づけてくれたり、傷を癒してくれたり、一人一人に対して、そっと寄り添ってくれます。
いろんな面をもった音楽の面白さを感じさせてくれる映画であり、大人も子どもも関係なく楽しめる映画です。
ウィリアムと一緒に旅をしている気持ちになれます。
そして、音楽がきっと好きになり、人生の一歩を踏み出す勇気を与えてくれると思います。