大島食品工業(株)は、給食のミルメークでお馴染みの名古屋市にある食品会社です。
昭和23年に製薬会社として始まり、昭和29年には組織を株式会社に改めました。
現在のように食品部門を始めるようになったのは、昭和34年からです。
食品部門を設立して給食事業に参入し、当初は紡績や自衛隊、病院などに物資を納入していました。
学校給食の分野に進出を始めたのは、昭和40年からです。
最初は脱脂粉乳を利用したプリンの素から始まり、昭和42年に大島食品工業(株)を代表する牛乳調味料のミルメークの製造を開始しました。
ミルメークの開発・製造を開始した背景には、牛乳を美味しく飲んでもらいたいとする考えからです。
牛乳が嫌いな子どもは今も昔も多く、全く飲めない生徒も少なくありませんでした。
なかには給食の時間が終わっても飲み終えられず、嫌々飲まされていた子どももいたほどです。
しかし牛乳にはカルシウムなどが多く含まれていて、子どもの成長に必要な栄養素が詰まっています。
栄養的に優れていても肝心の子どもたちが喜んで飲んでくれなければ意味がありません。
せっかく給食で出された牛乳を飲むなら、無理矢理ではなく自分から飲むようにした方が良いでしょう。
嫌々飲まされ続けていると、楽しいはずの給食の思い出すら思い出したくないほど悲しいものになります。
そうした思いをする子どもを一人でも減らすために、開発されたのが牛乳調味料のミルメークです。
開発されたのは、栃木県の学校給食会から与えられた課題がきっかけです。
嫌がる子どもたちにいかにして美味しく牛乳を飲ませるのか学校関係者の間で課題となっており、そんなときに大島食品工業(株)に話が持ちかけられました。
当時の担当者は二つ返事で依頼を引き受けたものの、試作を繰り返しても理想どおりになりません。
そんなときに開発のヒントとなったのは、コーヒー牛乳です。
インスタントコーヒーに牛乳を混ぜると美味しく飲めると気付いて、開発は一気に進みました。
試作したミルメークの粉末を牛乳に入れて混ぜるだけで、いちごやコーヒーなど子どもたちに大人気の味に変化し、牛乳本来の嫌な味は全くしません。
そして完成した試作品を関係者に見せて飲ませたところ、大きな評判となり爆発的に全国に広がっていきました。
昭和40年代以降に小学校や中学校に通っていた人なら、昔懐かしい給食の大切な思い出となっているでしょう。
子どもたちに不人気の牛乳を、高い栄養価はそのままに味を大きく変えるのは簡単ではありません。
そんな簡単ではない課題を大島食品工業(株)が引き受けたのは、美味しく食べてこその精神があったからです。
どれだけ栄養価が高くても、美味しく食べられないと意味がありません。
学校給食に楽しさと美味しさをと呼びかけてきた大島食品工業(株)だからこそ、難しい課題を引き受け製品化までこぎ着けました。
美味しく食べてこその精神は、半世紀近く経った現在でも受け継がれています。
開発当初は少なかったミルメークの味も、バナナやメロン、抹茶きなこなど時代に合わせてさまざまなフレーバーを追加し全8種類となりました。
昔は粉末タイプのみでしたが、現在では液体タイプも登場しています。
液体タイプはコーヒー・ココア・いちごの3種類あり、好みの味を選べます。
また液体タイプだと粉末と異なり、牛乳瓶の底に溶けずに残ってザラザラしてしまうことはありません。
入れた瞬間から牛乳と混ざり合い美味しい味に変化するので、嫌な気持ちがせず最後まで牛乳を飲めます。
美味しく飲んでこその精神があるからこそ、さらに飲みやすい液体タイプが生まれたのでしょう。
小学校や中学校の給食時代に出されていた人にとっては、思い出の品なので大人になった現在でもたまに飲みたくなるかもしれません。
しかし学校給食用の食品だと、なかなか気軽に手に入らないと思い諦めてしまうかもしれません。
ですが現在ではスーパーやドラッグストア、100円ショップでも販売されています。
家庭用として5個入り、20個入りなどのラインナップがあるので、もしお子さんが牛乳嫌いで悩んでいるなら試してみる価値があるかもしれません。
また子どもに見せることによりお父さんやお母さんの給食の思い出を語り合ったり、同世代で集まった時にも話のネタになるでしょう。
大島食品工業(株)では、時代とともに変わる食生活に対応しながらさまざまな製品を作り続けています。
学校給食向けのゼリーの素、栄養のある小魚を食べやすくした味付け小魚のミニフィッシュなどなど、大ヒット商品以外にも製造しています。
一般的には牛乳調味料のイメージが強い食品会社ですが、いつも使っている食品も実は作っているかもしれません。
現在では全国に営業拠点を設け、工場も各地にあります。
これからも美味しく食べてこその精神はそのままに、時代に合わせた食品を給食の現場に納入していきます。
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