入社して5年目になるということで、忘年会の幹事を引き受けることになりました。
従業員は全部で60名とそこまで多くはないのですが、自分が幹事をして全員が思い出に残る会にしたいという思いもあり、何とか予算の範囲内で都心にある比較的高級な飲食店を予約することにしたのです。
とは言うものの、感じは私以外にも同期が2名いましたので独断で決めるわけにもいかず当初はこれまで利用していた飲食店でいいのではという声があったのも事実です。
悩んでいた私に、上司がいつもの場所だと少しマンネリ化しているから気分を変える意味でも別のところにしたらどうか、と言ってくださったのです。
これ幸いに、上述のように予約をしたというわけなのです。
さて、皆さんも経験があるかもしれませんが忘年会と言えば余興がつきものです。
最近では、嫌がる従業員に強制的にやらせるのはパワハラだとして批判を浴びる会社も少なくありませんが、我が社では恒例の行事であり基本的に嫌がる人はいません。
なぜなら、社内の雰囲気がとても良いですし余興で何か失礼をしたからと言って、後日それを咎める人もいないいわゆるアットホームなところだからです。
むしろ、何か月も前か何を披露しようか考えている人も多くいますし、それを仕事中に上司に見つかっても笑いで突っ込んでくれるため非常に働きやすく過ごしやすい環境でもあります。
ただし、前年に誰かがやったようなものは避けなければならないのでこの点は気をつけるようと意識しました。
昨年は、入社2年目の新人と管理職がコンビを組んで漫才を行い新人がまさかのツッコミ役ということで全社員に衝撃を与えたという事件があったのです。
それからその新人もこれまで以上に職場に馴染んだこともあり、自分をアピールする場とも言えるでしょう。
そして、最も評価の高い余興には豪華なプレゼントが贈られるということなのでとにかく前年に優勝した催しを超える内容でなければ、入賞することは不可能なのです。
果たして、どのようなものが全世代に受けて盛り上がるだろうかと考えたところ、私が出した答えはフリートークでした。
これを聞いて、何のひねりもないではないか、と感じる人もいるのではないでしょうか。
実は私は、社内でも比較的おとなしいタイプで基本的にペラペラと話をする人間ではありません。
だからこそ、フリートークで盛り上げることによってギャップをアピールし高い評価を得られるのではないかと考えたのです。
社内ではおとなしいですが、友人やプライベートではかなりしゃべる方で有名なお笑いコンビのフリートークを寝ながら聞いていますので、簡単ではありませんが大体こんな感じかな、というイメージはつかめていました。
さて、フリートークと言っても漫才風のものにしたいなと思ったため、共に幹事を担当した同期の1人を掴まえてコンビを組みました。
基本的に私がボケを担当することになったのですが、その辺はフリーですので状況によって立ち位置が変化する変幻自在のコンビとして、参加することになったのです。
予め台本は用意せず、事前に他の従業員に適当な話題で質問を書いてもらいそれを箱に入れて取り出し、その場でボケを含めて回答していくという流れです。
もちろん、上司にもお願いをして無記名で記入してもらうようにしました。
さて、相方と特にこれと言って打ち合わせをすることなく本番当日を迎えました。
準備は必要無いというものの、面白いことを言えなかったらどうしようという不安と緊張から心身症の一つである緊張型頭痛を引き起こしてしまい、頭を締め付けるような連続した痛みが私を襲います。
当然食事も喉を通らず、不気味な笑みを浮かべながら他の人の余興を見ていたのだけは覚えています。
さて、我々の出番がきました。余興の名前は、その名の通りハガキでフリートーク、というもので事前にお願いをしていたこともありこの辺で爆笑を誘うことはありませんでした。
時間が限られていますので、早速一枚引いたところ何といきなり直属の上司の質問です。
内容は詳しく書けませんが、仕事とは全く関係のない登山に関することでした。
そこで私は、登山のことは全く分かりませんので適当な用語で必要な道具を説明し、相方もそれに合わせたり突っ込んでくれたりして何とか一枚目を乗りきることができたのです。
すると、初めから爆笑が起こり普段は笑わないような人も素敵な笑みを浮かべているではありませんか。
ここでヒートアップした私は、2枚目3枚目と質問に答え時間的に最後の質問に回答したところ、嬉しいことに時間を延長してもらえたのです。
この時は嬉しかったですが、今思えばよく頑張ったなと思います。
結果は、私たちの優勝で幕を閉じました。
かなり高評価を頂くことができ、さらに来年も同じようにやってくれ、という管理職の有り難いお言葉も頂戴できましたし全員が大満足の忘年会となったのです。