一時期は海外メーカーのゲームに押されて、もうダメだと言われていた日本のゲーム業界ですが、近年はダークソウルシリーズがヒットするなど、復活の兆しを見せています。
2019年下半期も大人気シリーズであるモンスターハンターシリーズの最新作である、「モンスターハンターワールドアイスボーン」や錬金術師の女の子を主人公にした、アトリエシリーズの最新作「ライザのアトリエ~常闇の女王と秘密の隠れ家」が発売されるなど期待作が目白押しです。
そんな活況の中で密かに世界中のコアなゲームファンの注目を集めている作品があります。
それが11月19日に発売予定の「シェンムー3」です。
こう聞いても若い世代のゲームファンはそんなゲーム聞いたことがないと、首をかしげる人もいるかもしれません。
知らないのも無理はない話です、何しろ初代が発売されたのは1999年と実に20年も昔の話だからです。
しかも70億円という莫大な開発費用を投じて開発されたにも関わらず、売上は期待したほど伸びませんでした。
そのためシェンムーはセガサターンやドリームキャストといったハードを販売して、任天堂やソニーと渡り合っていた有力ゲームメーカーであったセガの衰退を決定づけた作品とも言われています。
こう説明するといかにも失敗作といった感じのシェンムーですが、売上が伸び悩んでいた当時から熱狂的なファンが存在しました。
それも当然の話かもしれません、何故ならばシェンムーとは現代において爆発的な人気を誇るアサシングリードシリーズなどが採用している、オープンワールドゲームの元祖と言われている作品だからです。
ゲームが発売された1999年当時は、まだゲームのグラフィックが弱かった時代で発売されている作品も、スーパーファミコン時代からの延長で、キャラクターなどがデフォルメされているものが主流でした。
そんな中でシェンムーは現在主流になっているリアリティ重視のキャラクターデザインを採用し、ゲームファンを驚かせたのです。
もっともリアル調のグラフィックだけならば、それ以前にも例はありました。
この作品がすごいと評価されているのはその徹底的な作り込みです。
日本の横須賀を舞台に4つのエリアで構成された箱庭の中には300人以上のノンプレイヤーキャラクターが存在しており、しかもその全員と会話が可能でした。
しかも会話はフルボイスで実装されています。
当時は一流メーカーが発売する超大作でも重要な場面だけ音声が入るパートボイスが主流でした、20年以上が経過した現在でもノンプレイヤーキャラクターとの会話にボイスが入らない作品の方が多いくらいです。
これだけでもセガの開発チームがこの作品にかけて膨大な努力が伝わってきます。
さらにシェンムーには時間の概念まで存在します。
夕方になれば小学生は家に帰り、夜になれば商店街の親父さんは店をしめて飲み屋へと出かけるのです。
こうした時間経過システムと、昼と夜でキャラクターが移動する作品は現代のオープンワールド作品ならいくつも例をあげることができますが、シェンムーでは行動が変化するだけではなく会話内容まで時間帯に応じて変更されます。
これは今発売されているゲームでも、ほとんどの作品が出来ていない作り込みです。
こうした予算を度外視した作り込みと、既存のゲームとは一線を画すゲームデザインによって、シェンムーは熱狂的な信者を獲得し、セールスが振るわなかったにも関わらずインターネット上で行われる、続編が出て欲しいゲームランキングで上位にランクインする、伝説のレトロゲームになったのです。
しかしオープンワールドのゲームはインディーズのレベルでリメイクできる2Dアクションなどと違い、莫大な開発費用が必要になるため、続編が出ることはないだろうと考えられていました。
ですが2015年に本シリーズの開発者であった鈴木裕さんが、開発資金を得るためのクラウドファンディングを開始、瞬く間に世界中のゲームファンからの援助が集まったことで、伝説のゲームはついに現代に蘇ることになったのです。
シェンムーシリーズは凄まじい作り込みが評価される一方で、初代とシェンムー2の主人公を務めた主人公、芭月涼の物語が完結していないという点が批判されてきました。
期待したほどのセールスが得られなかったことが原因で、発売予定だった完結編であるシェンムー3の開発が中止されてしまったからです。
今回の3で物語が綺麗に完結すれば、初代やシェンムー2が再評価され現代の技術によってフルリメイクされるという展開もあるかもしれません。
若い世代のゲーマーには初耳かもしれないシェンムーですが、現代の多くの名作にも影響を与えている歴史的なシリーズです。
2018年には画質を向上させた上で1と2をまとめた「シェンムーI&II」がPS4で発売されたので、シェンムー3に興味を持ち遊んでみようと考えたならば、今のうちにプレイしておくことをおすすめします。
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