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アンナチュラルという傑作について

死体解剖を主軸に人の生と死に寄り添うお話しです。舞台は不自然死究明研究所という民間の研究所の解剖機関です。

主人公は医師免許を持ち、生体ではなく遺体を専門とする法医解剖医のミコトです。真摯に真面目に目の前のご遺体に向き合う姿にいつの間にか応援してしまうような女性です。

日々不可解な死を遂げるご遺体のなぜ亡くなったのかという原因究明から始まります。一話毎に刑事ドラマにあるような推理が展開されていく流れは気持ちよく、いつの間にか時間が過ぎ去って行くようです。

このドラマが他の刑事ドラマと一線を画す理由は生きている人間にもドラマがあるからです。

遺された人間の気持ちは悲しいだけではありません。かかわり方によっては少し救われる気持ちがあったり、悔しさ、怒り、憎しみが様々な角度から表現されています。

死を描くとともに生を描く、この言葉がこれほどしっくりとくるドラマはなかなかありません。

一話完結型で見やすい一方で、結末への伏線が各所にちりばめられており、最終話への駆け抜け方が圧巻です。もし叶う状況であれば見返してみると更に面白みが増します。

更に、魅力的な主人公の周りを取り巻くキャラクターが秀逸です。上司の中堂医師はあたりが強く、第一印象は横暴一択です。その部下であり中堂医師のサンドバッグとなってしまう坂本さんはムーミン好きの検査技師で、横暴さへの反抗の仕方が現代らしく共感してしまう人もいる事かと思います。

ミコトと仲のいい東海林ははつらつとした気持ちのいい検査技師でミコトを公私ともに支えます。新しく入ったバイトの医学生六郎も事件解決のために奔走するミコトとは異なる一生懸命さと透明な水の中に墨を一滴落とすような危うさが見ている人の気持ちを荒らします。やさしいパパのような神倉さんはこの施設の所長で優しく厳しくこの個性豊かなグループをまとめます。この人だからこの施設が立ち上げられたというエピソードが心にぐっときます。

エピソードを続ける中でバラバラだったこのグループが一つの事件解決へと一致団結していく姿もまた、見ていて気持ちのいいものです。人の死という重いテーマを扱った中で、キャラクターたちの会話で笑ったり救われるような場面が軽く、いいバランスが保たれています。

ここで主題歌の話をします。ドラマの主題歌なんて第一話を見ればあとはかわらず流れるだけとばかりと思っていました。このアンナチュナルほど、米津玄師の歌う「Lemon」が似合うドラマはありません。最後にこの曲が流れるタイミングがあまりにもぴったりすぎます。同じ曲なのに違う話毎になぜかなんだか違う曲に聴こえてくるような不思議な曲です。終わったと思っても、次の話に飛ばさずに、ぜひ主題歌を聴いてください。そしてこのドラマの余韻に浸ってください。

最後に、このドラマは人の死を扱った重いテーマです。決して明るい話ではありません。ですが、このドラマを通して改めて生きる事について考えさせられます。理不尽な死を、周りが勝手に思い描く良い話に置き換えるのではなく、事実として受け止め、感情移入を許さない姿勢がすばらしいドラマです。

観ていない方はぜひ、観てください。きっと後悔しません。

 

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